ベラボーの仕事場
古今亭 志ん生「極月その壱」
えーっ、志ん生さんですが・・・
今夜は極月の
「富久」

「フウィ〜ッさぶいネー、ウーラ、ウーラッさぶいよお〜」
しくじった芝の旦那の火事見舞いに真冬の江戸を駆け抜ける・・・
「ナニ吠えてやがんだ犬め!!」
走り出した(太鼓持ち)久蔵に吠えたのだろう、
途中はしりながらあれやこれや目論むところも、
一緒に走りながら聞いているようである。

枕の部分で当時寄席の近くを通っていたトロリーバスだろうか
「ホワ〜〜〜〜ン」と、遠くで聞こえる。
「噺家なんてましてそうだ、カラコン、カラコン・・・」
着物の袂に両手をすっぽり包み込み、その頃の寒さが
今の寒さでない何かがジーンと伝わる。

噺家なんてまして貧乏だからこおう下しか見てないですからな
銀貨が落ちてると思って拾うと
「それは釘です!」って
そう言う親切なやつ、誰なんだ?
江戸時代の火事とはいったいどういうものだったか?
かいま見る事が出来る。
久蔵、「店の身代が潰れようというときに・・・」
旦那、「久蔵おまえはどいてろ。芸人だ怪我あすっといけね・・・」
そう泣けるところでもないが、
旦那の大きさがここではっきりする。

こんな人間的に大きな旦那さん、最近いないね。
旦那と呼ばれる人は大きくあって欲しい。
とうとう旦那のところで久蔵がお酒を飲んでしまう。
「いいかい?飲むなとは言わないけれど
 おまえは酒でしくじったんだぞ・・・」
「しょうのない奴だ・・・・」
甘えるだけ甘える久蔵にも驚く。

「なんだよ、またジャンジャンやってるぜ、」
結局、久蔵はこの寒風吹きすさぶ真夜中、
芝と浅草を往復することになってしまった。
自宅はポウーっと灰になる。
糊屋のばばあさんが火元・・・
「ちきしょう、ノリヤのばばあ・・・」
「毎日爪に火を灯すようなしみったれた生活して、・・」
「その爪の火が燃え移ったんだ!」
毒づく久蔵だが、後の祭り・・・